いわゆる「だったん人の踊りと合唱」です。
歌劇『イーゴリ公』第2幕で、繰り広げられる大合唱と踊り。
合唱は、ポーロヴェツ人に捕らえられ、とりことなった人々が歌う望郷の歌「風の翼に乗って飛んでゆけ」と、
ポーロヴェツ人がその指導者であるコンチャークをたたえる「ハーンのほまれの歌を歌え」から成り立っています。
なお、「だったん人の踊り」の対訳歌詞付きオーケストラ譜が全音楽譜出版社から出版されています。
(ボロディン『ポーロヴェツ人の踊りと合唱(ダッタン人の踊り)歌劇「イーゴリ公」より』)
Невольцы
Улетай на крыльях ветра
ウリターイ ナクルィーリヤフ ヴィェートラ
ты в край родной, родная песня наша,
トゥィー フクラーイ ラドノーイ、 ラドナーヤ ピェーシニャ ナーシャ、
туда, где мы тебя свободно пели,
トゥダー、グヂェー ムィー チビャー スヴァボードナ ピェーリ、
где было так привольно нам с тобою.
グヂェー ブィーラ ターク プリヴォーリナ ナーム スタボーユ.
Там, под знойным небом,
ターム、 パドズノーイヌィム ニェーバム、
негой воздух полон,
ニェーガイ ヴォーズドゥフ ポーラン、
там, под говор моря,
ターム、 パドゴーヴァル モーリャ
дремлют горы в облаках;
ドリェームリュド ゴールィ ヴァブラカーフ;
там так ярко солнце светит,
ターム ターク ヤールカ ソーンツェ スヴィェーチト、
родные горы светом заливая,
ラドヌィーイェ ゴールィ スヴィェータム ザリヴァーヤ
в долинах пышно роза расцветает *
ヴダリーナフ プィーシナ ローザ ラスツヴィターイェト
и соловьи поют в лесах зелёных;
イ サラヴィイー パユート ヴリサーフ ジリョーヌィフ;
и сладкий виноград растёт.
イ スラートキイ ヴィナグラート ラスチョート.
Там тебе привольней песня,
ターム チビェー プリヴォーリニェイ ピェーシニャ、
ты туда и улетай!
トゥィー トゥダー イ ウリターイ!
Половцы
Пойте песни славы хану! Пой!
ポーイチェ ピェーシニ スラーヴゥィ ハーヌ! ポーイ!
Славьте силу доблесть хана! Славь!
スラーフィチェ シール ドーブリェスチ ハーナ! スラーフィ!
Славен хан! Хан!
スラーヴィェン ハーン! ハーン!
Славен он, хан наш!
スラーヴィェノン、 ハーン ナーシ!
Блеском славы солнцу равен хан!
ブリェースカム スラーヴゥィ ソーンツ ラーヴィェン ハーン!
Нету равных славой хану! Нет!
ニェートゥ ラーヴヌィフ スラーヴァイ ハーヌ! ニェート!
Чаги хана славят хана.
チャーギ ハーナ スラーヴャト ハーナ.
Славят хана своего.
スラーヴャト ハーナ スヴァイェヴォー.
Кончак
Видишь ли пленниц ты
ヴィーヂシ リ プリェーンニツ トゥィー
с моря дальнего,
スモーリャ ダーリニェヴァ、
видишь красавиц моих
ヴィーヂシ クラーサヴィッツ マイーフ
из-за Каспия?
イズザカスピーヤ?
О скажи, друг,
オー スカジー、 ドルーク、
скажи только слово мне,
スカジー トーリカ スローヴァ ムニェ、
хочешь,
ホーチェシ、
любую из них я тебе подарю.
リュブーユ イズニフ ヤー チビェー パダリュー.
Половцы
Пойте песни славы хану! Пой!
ポーイチェ ピェーシニ スラーヴゥィ ハーヌ! ポーイ!
Славьте щедрость, славьте милость! Славь!
スラーフィチェ シシェードラスチ、 スラーフィチェ ミーラスチ! スラーフィ!
Для врагов хан грозен он, хан наш!
ドリェヴラゴーフ ハーン グロージェノン、 ハーン ナーシ!
Кто же славой равен хану, кто?
クトー ジェ スラーヴァイ ラーヴィェン ハーヌ、 クトー?
Блеском славы солнцу равен он!
ブリェースカム スラーヴゥィ ソーンツ ラーヴィェン オーン!
Славой дедам равен хан наш,
スラーヴァイ ヂェーダム ラーヴィェン ハーン ナーシ、
хан, хан Кончак!
ハーン、 ハーン カンチャーク!
Славой дедам равен он!
スラーヴァイ ヂェーダム ラーヴィェノン!
Грозный хан, хан Кончак!
グローズヌィイ ハーン、 ハーン カンチャーク!
Славен хан, хан Кончак!
スラーヴィェン ハーン、 ハーン カンチャーク!
Славен хан, хан Кончак!
スラーヴィェン ハーン、 ハーン カンチャーク!
Хан Кончак!
ハーン カンチャーク!
Невольцы, Невольники
Улетай на крыльях ветра
ウリターイ ナクルィーリヤフ ヴィェートラ
ты в край родной, родная песня наша,
トゥィー フクラーイ ラドノーイ、 ラドナーヤ ピェーシニャ ナーシャ、
туда, где мы тебя свободно пели,
トゥダー、グヂェー ムィー チビャー スヴァボードナ ピェーリ、
где было так привольно нам с тобою.
グヂェー ブィーラ ターク プリヴォーリナ ナーム スタボーユ.
В край тот, где под знойным небом,
フクラーイ トート、グヂェー パドズノーイヌィム ニェーバム、
негой воздух полон,
ニェーガイ ヴォーズドゥフ ポーラン、
где под говор моря,
グヂェー パドゴーヴァル モーリャ
дремлют горы в облаках;
ドリェームリュド ゴールィ ヴァブラカーフ;
там так ярко солнце светит,
ターム ターク ヤールカ ソーンツェ スヴィェーチト、
родные горы светом озаряя,
ラドヌィーイェ ゴールィ スヴィェータマザリャーヤ
в долинах пышно роза расцветает *
ヴダリーナフ プィーシナ ローザ ラスツヴィターイェト
и соловьи поют в лесах зелёных;
イ サラヴィイー パユート ヴリサーフ ジリョーヌィフ;
и сладкий виноград растёт.
イ スラートキイ ヴィナグラート ラスチョート.
Там тебе привольней песня,
ターム チビェー プリヴォーリニェイ ピェーシニャ、
ты туда и улетай.
トゥィー トゥダー イ ウリターイ.
Половцы
Славой дедам равен хан наш.
スラーヴァイ ヂェーダム ラーヴィェン ハーン ナーシ.
Хан, хан Кончак!
ハーン、 ハーン カンチャーク!
Славой дедам равен он,
スラーヴァイ ヂェーダム ラーヴィェノン、
грозный хан, хан Кончак!
グローズヌィイ ハーン、 ハーン カンチャーク!
Славен хан, хан Кончак.
スラーヴィェン ハーン、 ハーン カンチャーク.
Хан Кончак.
ハーン カンチャーク.
Пляской вашей тешьте хана.
プリャースカイ ヴァーシェイ チェーシチェ ハーナ.
Пляской тешьте хана, чаги,
プリャースカイ チェーシチェ ハーナ、 チャーギ、
хана своего.
ハーナ スヴァイヴォー.
Пляской тешьте хана, чаги,
プリャースカイ チェーシチェ ハーナ、 チャーギ、
хана своего, своего.
ハーナ スヴァイヴォー、スヴァイヴォー.
Пляской вашей тешьте хана!
プリャースカイ ヴァーシェイ チェーシチェ ハーナ!
Пляской тешьте!
プリャースカイ チェーシチェ!
Наш хан Кончак.
ナーシ ハーン カンチャーク.
とりこの女たち
風の翼に乗って飛んでゆけ
懐かしい歌よ、ふるさとへ、
気が向くままにおまえを口ずさんでいたふるさとへ、
私たちもおまえもあんなにも自由だったふるさとへ。
そこは焼けつくような空の下
大気はやすらぎにあふれ、
海のさざめきの間近で、
雲に包まれて山々がまどろんでいる。
懐かしい山々を光で満たしながら、
太陽が燦々と輝いているふるさと。
谷間では艶やかに薔薇が咲き誇り、
青々とした森では夜鶯がさえずり、
そして甘い葡萄が実るふるさと。
ふるさとでなら歌よ、おまえはさらに自由でいられる。
おまえはふるさとへ飛んでゆけ!
ポーロヴェツ人
ハーンのほまれの歌を歌え!歌え!
ハーンの力を、勇ましさを讃えよ!讃えよ!
栄えあるハーン!ハーン!
栄えあるかた、我らのハーン!
ほまれの輝きが太陽に並び立つハーン!
ハーンのほまれにかなう者はいない!いない!
奴隷女たちがハーンをたたえている。
自分たちのハーンをたたえている。
コンチャーク
海のかなたから連れて来た
捕虜の女たちが見えるだろう、
カスピ海のかなたから連れて来た
私の美女たちが見えるだろう?
さあ言え、友よ、
一言だけ言ってくれ、
所望とあらば、
だれでも君に進ぜよう。
ポーロヴェツ人
ハーンのほまれの歌を歌え!歌え!
ハーンの心の寛さと情け深さを讃えよ!讃えよ!
敵には手強いハーン、我らのハーン!
何者がハーンのほまれにかなおうか?
ほまれの輝きは太陽に並び立つ!
ほまれが祖先に並び立つ我らのハーン、
ハーン、ハーン・コンチャーク!
ほまれが祖先に並び立つかた!
畏れ多きハーン、ハーン・コンチャーク!
栄えあるハーン、ハーン・コンチャーク!
栄えあるハーン、ハーン・コンチャーク!
ハーン・コンチャーク!
とりこたち
風の翼に乗って飛んでゆけ
懐かしい歌よ、ふるさとへ、
気が向くままにおまえを口ずさんでいたふるさとへ、
私たちもおまえもあんなにも自由だったふるさとへ。
かの地では焼けつくような空の下
大気はやすらぎにあふれ、
海のさざめきは快く、
雲に包まれて山々がまどろんでいる。
懐かしい山々を光で照らしながら、
太陽が燦々と輝いているふるさと。
谷間では艶やかに薔薇が咲き誇り、
青々とした森では夜鶯がさえずり、
そして甘い葡萄が実るふるさと。
ふるさとでなら歌よ、おまえはさらに自由でいられる。
おまえはふるさとへ飛んでゆけ。
ポーロヴェツ人
ほまれが祖先に並び立つ我らのハーン、
ハーン、ハーン・コンチャーク!
そのほまれが祖先に並び立つかた、
畏れ多きハーン、ハーン・コンチャーク!
栄えあるハーン、ハーン・コンチャーク、
ハーン・コンチャーク。
踊りでハーンをお慰めせよ。
ハーンをお慰めせよ、奴隷女たち。
おまえたちのハーンを。
ハーンをお慰めせよ、奴隷女たち。
おまえたちのハーンを。
踊りでハーンをお慰めせよ!
踊りでお慰めせよ!
我らのハーン・コンチャーク。
в долинах пышно роза расцветает *
オーケストラ譜や一部の録音では、単数形が使われていますが、全曲盤などでは、複数形で歌われています。
розы расцветают
ローズィ ラスツヴィェターユト
「ハーン・コンチャーク」
ハーンはポーロヴェツ人の長、指導者の称号で、チンギス・ハーンのハーン、成吉汗(ジンギス・カン)の汗と同じです。
コンチャークは、イーゴリと同時代のポーロヴェツ人の有力なハーンの一人です。
「とりこ、捕虜、奴隷」
この場面では、невольник「自由のない者=束縛されている者/とりこ、奴隷」
пленник「捕らえられた者/捕虜、とりこ」、чага
「女性の奴隷」と3種類の単語(男性形、女性形の違いを考慮せずに)が使われています。
それぞれの単語で待遇がどのように違ったのか、実際のところはわかりませんが、чагаという単語だけ、
「奴隷」の訳語を充てることにしました。(2004/11/03)
「夜鶯」
初夏の夜中に美しい声で囀る渡り鳥で、和名はヨナキツグミ。
イギリス、西欧に飛来するサヨナキドリ=ナイチンゲールとは別種だそうです。
ロシア語は日本語では使わない音がたくさんある言葉です。
正確にロシア語を日本語のカナで表現することはできませんが、なるべくロシア語に近い表記を試みてみました。
「こういう風に聴こえないこともない」程度の近さだと思ってください。
なお、ロシア語の単語の区切りと、ここで挙げたカタカナの区切りとは一致しません。
下線がついているカタカナは母音の部分で、基本的には、母音一つと音符一つが対応します。
下線がついていないカタカナは子音や二重母音の一部、半母音なので、聴く場合には、いっそのこと無視してしまっても構いません。
これから演奏会などでロシア語でこの歌を歌う皆さんには、一度、ロシア語の発音を習うことをお勧めします。
このサイトでは、ボロディンの作詞による歌劇『イーゴリ公』の歌詞(ロシア語)の一部、
及び、『イーゴリ公』のソフトのジャケット類と関連する書籍の表紙の画像、
そしてビリービンによる『イーゴリ公』関連のイラストレーションの画像を掲載しています。
以上のロシア語歌詞、画像の掲載に何らかの著作権上の問題がありましたら、ただちに掲載を取りやめます。
また、掲載している『イーゴリ公』の日本語訳は管理人Vindobonaによるものです。(2006/03/15)