歌劇『イーゴリ公』第2幕で主人公のイーゴリ公が歌うアリアです。
アリアとして聴く機会は少ないかも知れませんが、序曲でもメロディーが引用されています。
ポーロヴェツの侵略からロシヤを守るため、軍を率いて遠征に出たイーゴリ公ですが、
カヤーラ河畔での戦いで遠征軍は壊滅し、イーゴリ公自身も負傷し、虜囚となります。
夜更けのポーロヴェツの陣営で、イーゴリ公は苦悩を吐露します。
Князь Игорь
Ни сна, ни отдыха
измученной душе,
ニ スナー、 ニ オードドゥィハ イズムーチェヌナイ ドゥシェー、
мне ночь не шлёт отрады и забвенья.
ムニェ ノーチ ニェ シリョータトラードゥィ イ ザブヴィェーニヤ、
Всё прошлое я вновь переживаю,
フショー プローシュライェ ヤー ヴノーフィ ピリジヴァーユ、
один в тиши ночей:
アヂーン フチシー ナチェーイ:
и Божья знаменья угрозу,
イ ボージヤ ズナーミェニヤ ウグローズ、
и бранной славы пир весёлый,
イ ブラーヌナイ スラーヴゥィ ピール ヴィショールィイ、
мою победу над врагом,
マユー パビェードゥ ナドヴラゴーム、
и бранной славы горестный конец,
イ ブラーヌナイ スラーヴゥィ ゴーリェスヌィイ カニェーツ、
погром, и рану,
パグローム、イ ラーヌ、
и мой плен,
イ モーイ プリェーン、
и гибель всех моих полков,
イ ギービェリ フシェフ マイーフ パルコーフ、
честно, за родину головы сложивших.
チェースナ、ザローヂヌ ゴーラヴゥィ スラジーフシフ.
Погибло всё, и честь моя и слава,
パギーブラ フショー、イ チェーシチ マヤー イ スラーヴァ、
позором стал я земли родной.
パゾーラム スタール ヤー ジムリー ラドノーイ:
Плен, постыдный плен
プリェーン、パストゥィードヌィイ プリェーン
вот удел отныне мой,
ヴォートゥヂェーラトヌィーニェ モーイ、
да мысль, что все винят меня!
ダー ムィーシリ、シトー フショー ヴィニャート ミニャー!
О, дайте, дайте мне свободу,
オー、 ダーイチェ、ダーイチェ ムニェ スヴァボードゥ、
я мой позор сумею искупить;
ヤー モーイ パゾール スミェーユ イスクピーチ;
спасу я честь мою и славу,
スパスー、ヤー チェーシチ マユー イ スラーヴ、
я Русь от недруга спасу!
ヤー ルーシ アトニェードルガ スパスー!
Ты одна голубка, лада,
トゥィー アドナー ガループカ、ラーダ、
ты одна винить не станешь,
トゥィー アドナー ヴィニーチ ニ スターニェシ、
сердцем чутким
シェールツェム チュートキム
всё поймёшь ты,
フショー パイミョーシ トゥィー、
всё ты мне простишь.
フショー トゥィー ムニェ プラシチーシ.
В терему твоём высоком,
フチェリムー トヴァヨーム ヴゥィソーカム、
в даль глаза ты проглядела,
ヴダーリ グラーザ トゥィー プラグリェヂェーラ、
длуга ждёшь ты дни и ночи,
ドルーガ ジヂョーシ トゥィー ドニー イ ノーチ、
горько слёзы льёшь.
ゴーリカ シリョーズィ リヨーシ.
Ужели день за днём
ウジェーリ ヂェーニ ザドニョーム
влачить в плену бесплодно,
ヴラーチチ フプリヌー ビェスプロードナ、
и знать, что враг терзает Русь?
イ ズナーチ、シトー ヴラーク チルザーイェト ルーシ?
Враг, что лютый барс.
ヴラーク、シトー リュートゥィイ バールス.
Стонет Русь в когтях могучих,
ストーニェト ルーシ フコークチェフ マグーチフ、
и в том винит она меня!
イ フトーム ヴィーニト アナー ミニャー!
О, дайте, дайте мне свободу,
オー、ダーイチェ、ダーイチェ ムニェ スヴァボードゥ、
я свой позор сумею искупить,
ヤー スヴォーイ パゾール スミェーユ イスクピーチ、
я Русь от недруга спасу!
ヤー ルーシ アトニェードルガ スパスー!
Ни сна, ни отдыха измученной душе;
ニ スナー、ニ オードドゥィハ イズムーチェヌナイ ドゥシェー;
мне ночь не шлёт надежды на спасенье;
ムニェ ノーチ ニェ シリョート ナヂェージドゥィ ナスパシェーニイェ;
лишь прошлое я вновь переживаю,
リーシ プローシュライェ ヤー ヴノーフィ ピリジヴァーユ、
один в тиши ночей,
アヂーン フチシー ナチェーイ、
и нет исхода мне!
イ ニェート イスホーダ ムニェ!
Ох, тяжко, тяжко мне!
オーフ、チャーシカ、チャーシカ ムニェ!
Тяжко сознанье бессилья моего!
チャーシカ サズナーニイェ ビシシーリイェ マイヴォー!
イーゴリ公
疲れ果てた心には眠りも安らぎもなく、
夜が私に慰めと忘却をもたらすことはない。
夜のしじまにただ独り、
再びよみがえるのは過ぎ去った出来事、
神の不吉な兆しと
心躍る戦の誉れの宴、
敵への勝利、
そして戦の誉れの無残な結末、
虐殺と負傷、
とらわれのこの身、
まこと祖国のために討ち死にした
我が軍の全滅。
我が名誉も誉れも、何もかもが失われ、
私は故郷の国の恥辱になりはてた。
とらわれの身、情けないとらわれの身、
これこそがこれからの我が宿命なのだ。
全て我が仕業なのだ!
おお、私を自由に、自由にし給え、
この恥辱をすすぐことができようぞ。
我が名誉と誉れを挽回し、
ルーシを敵から救おうぞ!
そなただけはかわいい人、、愛しい人よ、
そなただけは細やかな心遣いで
咎めようとはすまい。
そなたは全てを察して、
私をすっかり赦してくれよう。
館の高殿から彼方を見つめ、
日ごと夜ごと、私を待ち続け、
悲しみの涙に暮れていよう。
まさか、来る日も来る日も
とらわれの身として空しく過ごし、
敵がルーシを踏みにじるのを
目の当たりにしようとは?
敵は獰猛な豹同然。
ルーシはその強力な爪に呻き、
そして、その罪で私を咎めるのだ。
おお、私を自由に、自由にし給え、
この恥辱をすすぐことができようぞ。
ルーシを敵から救おうぞ!
疲れ果てた心には眠りも安らぎもなく、
夜が私に救いの希望をもたらすことはない。
ただ過ぎ去った出来事がよみがえり、
夜のしじまにただ独り、
終わりがくることはない!
ああ、私には耐え難い!
このむなしさは耐え難い!
ロシア語は日本語では使わない音がたくさんある言葉です。
正確にロシア語を日本語のカナで表現することはできませんが、なるべくロシア語に近い表記を試みてみました。
「こういう風に聴こえないこともない」程度の近さだと思ってください。
なお、ロシア語の単語の区切りと、ここで挙げたカタカナの区切りとは一致しません。
下線がついているカタカナは母音の部分で、基本的には、母音一つと音符一つが対応します。
下線がついていないカタカナは子音や二重母音の一部、半母音なので、聴く場合には、いっそのこと無視してしまっても構いません。
これから演奏会などでロシア語でこの歌を歌う皆さんには、一度、ロシア語の発音を習うことをお勧めします。
このサイトでは、ボロディンの作詞による歌劇『イーゴリ公』の歌詞(ロシア語)の一部、
及び、『イーゴリ公』のソフトのジャケット類と関連する書籍の表紙の画像、
そしてビリービンによる『イーゴリ公』関連のイラストレーションの画像を掲載しています。
以上のロシア語歌詞、画像の掲載に何らかの著作権上の問題がありましたら、ただちに掲載を取りやめます。
また、掲載している『イーゴリ公』の日本語訳は管理人Vindobonaによるものです。(2006/03/15)