歌劇『イーゴリ公』プロローグでプチーヴリの民衆によって歌われる、
出発するイーゴリ公たちをことほぐ歌です。
序曲にもメロディーが引用されていないので全曲盤以外ではなかなか聴く機会がありませんが、
魅力的で美しいメロディーです。
ここでは一つにまとめて紹介しますが、前半の「輝く太陽にほまれあれ!」はプロローグの最初に歌われ、
間に日蝕や、留守を守る者たちとの別離、2人のグドーク弾きの逃亡などをはさんで、
後半の「満天の星々にほまれあれ!」がプロローグの最後に歌われます。
『イーゴリ遠征物語』の言い回しが、部分的に歌詞に取り入れられてアクセントになっています。
Народ
Солнцу красному слава! Слава!
ソーンツ クラースナム スラーヴァ! スラーヴァ!
Слава в небе у нас!
スラーヴァ ヴニェービェ ウナース!
Князю Игорю слава, слава,
クニャージュ イーガリュ スラーヴァ、 スラーヴァ、
слава у нас на Руси!
スラーヴァ ウナース ナルーシ!
Туру ли ярому, князю Трубчевскому,
トゥール リ ヤーラム、 クニャージュ トループチェーフスカム、
Буйтуру Всеволоду Святославичу
ブイトゥール フシェーヴァラドゥ スヴャタスラーヴィチュ
слава, слава, князю слава, слава!
スラーヴァ、 スラーヴァ、 クニャージュ スラーヴァ、 スラーヴァ!
Млад Володимиру да на Путивле,
ムラード ヴァラヂーミル ダ ナプチーヴリェ、
млад Святославу да князю на Рыльске,
ムラート スヴャタスラーヴ ダ クニャージュ ナルィーリスキェ
слава, слава князю, слава,
スラーヴァ、 スラーヴァ クニャージュ、 スラーヴァ、
слава на Руси!
スラーヴァ ナルーシ!
С Дона великого до Лукоморья
ズドーナ ヴィリーカヴァ ダルカモーリイェ
слава звенит по степям половецким.
スラーヴァ ズヴィニート パシチェーピャム パラヴェーツキム.
В землях незнаемых славу поют вам.
ヴジェームリャフ ニ ズナーイェムィフ スラーヴ パユート ヴァーム.
Слава! Слава! Славным князьям нашим!
スラーヴァ! スラーヴァ! スラーヴヌィム クニャージヤム ナーシム!
Слава! Слава! Храбрым дружинам их!
スラーヴァ! スラーヴァ! フラーブルィム ドルジーナミフ!
И на Дунай реке славу поют вам,
イー ナドゥナーイ リキェー スラーヴ パユート ヴァーム、
славу поют вам да красные девицы;
スラーヴ パユート ヴァーム ダ クラースヌィイェ ヂェーヴィツィ;
льётся их голос от моря до Киева.
リヨーツァ イフ ゴーラサットモーリャ ダキーイェヴァ.
Слава! Слава! Славным князьям нашим!
スラーヴァ! スラーヴァ! スラーヴヌィム クニャージヤム ナーシム!
Слава! Слава! Храбрым дружинам их слава!
スラーヴァ! スラーヴァ! フラーブルィム ドルジーナミフ スラーヴァ!
Всем князьям нашим слава, слава! Слава!
フシェム クニャージヤム ナーシム スラーヴァ、 スラーヴァ! スラーヴァ!
Рати храброй их слава, слава, слава!
ラーチ フラーブライフ スラーヴァ、 スラーヴァ、 スラーヴァ!
Слава! Слава!
スラーヴァ! スラーヴァ!
* * *
Народ
Частым звёздочком
チャーストゥィム ズヴョーズダチカム
слава, слава,
スラーヴァ、 スラーヴァ、
слава в небе високом,
スラーヴァ ヴニェービェ ヴィソーカム、
князьям нашим
クニャージヤム ナーシム
слава, слава,
スラーヴァ、 スラーヴァ、
слава у нас на Руси!
スラーヴァ ウナース ナルーシ!
Наперво большим,
ナピェールヴァ ボーリシム、
а по ним меньшим,
ア パニム ミェーニシム、
всем князьям у нас,
フシェム クニャージヤムナース、
всем слава, слава, слава,
フシェム スラーヴァ、 スラーヴァ、 スラーヴァ、
всем им слава, слава
フシェミム スラーヴァ、 スラーヴァ
всем на Руси!
フシェム ナルーシ!
Буйтур Всеволоду свет Святославичу,
ブイトゥール フシェーヴァラドゥ スヴェト スヴャタスラーヴィチュ、
млад соколику князю Владимиру,
ムラート サコーリク クニャージュ ヴラヂーミル、
храброй рати их слава!
フラーブライ ラーチ イフ スラーヴァ!
Храброй рати их слава!
フラーブライ ラーチ イフ スラーヴァ!
Рати храброй их слава!
ラーチ フラーブライ イフ スラーヴァ!
Здрави князи, здрави,
ズドラーヴィ クニャージ、 ズドラーヴィ.
слава князем слава,
スラーヴァ クニャージェム スラーヴァ、
слава храброй рати их,
スラーヴァ フラーブライ ラーチ イフ、
слава!
スラーヴァ!
民衆
輝く太陽にほまれあれ!ほまれあれ!
われらが空の太陽にほまれあれ!
われらがルーシのイーゴリ公にほまれあれ、
ほまれあれ、ほまれあれ!
勇猛なる野牛の如きトループチェフスクの公、
スヴャトスラーフ様の御子、荒れ牛のフセーヴォロト様に
ほまれあれ、ほまれあれ、公にほまれあれ、ほまれあれ!
プチーヴリの若きヴラヂーミル様に
ルィーリスクの公、若きスヴャトスラーフ様に
ほまれあれ、公にほまれあれ、ほまれあれ!
ルーシにほまれあれ!
大いなるドンから入り江まで
ほまれはポーロヴェツの野に沿って鳴り響く。
見知らぬ土地でもあなたがた諸公のほまれを讃えている。
ほまれあれ!ほまれあれ!われらの栄えある諸公に!
ほまれあれ!ほまれあれ!諸公の勇敢なる従士団に!
そしてドナウ河の地方でもあなたがたのほまれを讃えている。
あなたがたのほまれを麗しい乙女らが讃えている。
乙女らの歌声が海辺からキエフまで流れている。
ほまれあれ!ほまれあれ!われらの栄えある諸公に!
ほまれあれ!ほまれあれ!諸公の勇敢なる従士団に!
われらの公一人残らずにほまれあれ、ほまれあれ!ほまれあれ!
諸公の勇敢なる兵士にほまれあれ、ほまれあれ、ほまれあれ!
ほまれあれ!ほまれあれ!
* * *
民衆
満天の星々に
ほまれあれ、ほまれあれ
高き空の星々にほまれあれ、
われらの諸公に
ほまれあれ、ほまれあれ、
われらがルーシにほまれあれ!
始めに位高き方々に、
そして続く方々に
われらの公一人残らずに
ほまれあれ、ほまれあれ、ほまれあれ、
あらゆる公にほまれあれ、ほまれあれ、
ルーシのあらゆる公に!
スヴャトスラーフ様の御子、荒れ牛のフセーヴォロト様に、
若き隼ヴラヂーミル公に
諸公の勇敢なる兵士にほまれあれ!
諸公の勇敢なる兵士にほまれあれ!
勇敢なる諸公の兵士にほまれあれ!
御武運を、公のかたがた、御武運を。
ほまれあれ、諸公にほまれあれ、
諸公の勇敢なる兵士にほまれあれ!
ほまれあれ!
「われらがルーシのイーゴリ公にほまれあれ!」
「ルーシ」はロシヤの古名(ロシヤという呼称が一般的になるのは15世紀末以降)です。
日本のことを「日の本」というニュアンスに似ているかも知れません。
「イーゴリ公」は、本編の主人公で、南ロシア(現在のウクライナ)の小都市、ノーヴゴロト・セーヴェルスキイの領主。
「ほまれあれ」木村訳『イーゴリ遠征物語』の表現を使わせていただきました。「万歳」とも「栄光あれ」とも訳すことができます。
「スヴャトスラーフの御子、荒れ牛のフセーヴォロト様」
「フセーヴォロト」はイーゴリ公の実弟で、クルスク、トループチェフスクという二つの小都市の領主でした。
「スヴャトスラーフ」は、イーゴリ、フセーヴォロトの亡父です。
「プチーヴリの若きヴラヂーミル様」
イーゴリ公の長子で、歌劇のロシア側の舞台となる小都市プチーヴリの領主。
「ルィーリスクの公、若きスヴャトスラーフ様」
このスヴャトスラーフはイーゴリ公とフセーヴォロト公の亡兄オレークの息子。
小都市ルィーリスクの領主でした。
「ポーロヴェツの野に沿って」
「ポーロヴェツの野、ポーロヴェツの地」はドニェープル河とヴォルガ河の間のステップ地帯を指し、 実際はドニェープル河の支流スーラ河が、西のルーシと東のポーロヴェツの境となりました。
ロシア語は日本語では使わない音がたくさんある言葉です。
正確にロシア語を日本語のカナで表現することはできませんが、なるべくロシア語に近い表記を試みてみました。
「こういう風に聴こえないこともない」程度の近さだと思ってください。
なお、ロシア語の単語の区切りと、ここで挙げたカタカナの区切りとは一致しません。
下線がついているカタカナは母音の部分で、基本的には、母音一つと音符一つが対応します。
下線がついていないカタカナは子音や二重母音の一部、半母音なので、聴く場合には、いっそのこと無視してしまっても構いません。
これから演奏会などでロシア語でこの歌を歌う皆さんには、一度、ロシア語の発音を習うことをお勧めします。
このサイトでは、ボロディンの作詞による歌劇『イーゴリ公』の歌詞(ロシア語)の一部、
及び、『イーゴリ公』のソフトのジャケット類と関連する書籍の表紙の画像、
そしてビリービンによる『イーゴリ公』関連のイラストレーションの画像を掲載しています。
以上のロシア語歌詞、画像の掲載に何らかの著作権上の問題がありましたら、ただちに掲載を取りやめます。
また、掲載している『イーゴリ公』の日本語訳は管理人Vindobonaによるものです。(2006/03/15)